しゃぼんだまばたけ

しとしと・・・・しとしと・・・・
昨日も、今日も、雨が、ずーっと、降り続いています。

くんちゃんの口から出るのは、ため息ばかり。

 「あーあ、早く雨がやまないかな・・・きょうも、おそとで、あそべないや。あーあ・・・」

くんちゃんは、退屈で仕方がないので、ごろんと、床に寝そべって、また、ため息をつきました。

 「お姉ちゃん、あーそぼ」  やってきたのは、くんちゃんの妹たち。

くんちゃんは、めんどくさそうに、「後で!」と答えました。

 「おねえちゃんのけちんぼ。くんちゃんが、あそんでくれないから、あっちであそぼ」

妹たちはふてくされて部屋から出て行きました。

 「あめやんだかな」

何気なく、くんちゃんは、空を見上げました。
厚い雲に覆われていましたが、さっきまで降っていた雨が、うそのように、やんでいました。

 「あ、いまだ。おかあさん、おそとにいってくる・・・」

くんちゃんは、特急電車のようにお外に飛び出ました。

 「おねえちゃん!まってー!」

妹たちは急行電車のように、くんちゃんの後を追いかけました。

 「久しぶりのお外は気持ちいいな。何して遊ぼうかな。」

くんちゃんは、外の空気を胸いっぱいに吸いました。

 「おねえちゃん!シャボン玉しよう!」

 「いいね。しゃぼんだま」

くんちゃんと、妹たちは、仲良くシャボン玉遊びを始めました。

ふーぶーぶー
3人は胸いっぱいに空気を入れて、思いっきり空気をふーぶーとふきました。

あれあれ力いっぱい吹きすぎてシャボン玉ができません。

 「なんでできないのよ」

下の妹が、べそをかいて言いました。
くんちゃんは考えました。

 「おかしいな。ママとしたときは、たくさんシャボン玉が飛んだのに・・・・」

色んな息の強さでためして吹いてみました。

 「あ、わかった。息をやさしく吹かないとだめだった。ママはいつも、やさしくシャボン玉を吹いていたわ」

くんちゃんは、小さなママに変身。
妹たちに、優しくママのように言いました。

 「いいわね、シャボン玉は、ふーぶーと、強く吹いたらだめよ。シャボン玉さんが、痛いというわよ。ひなちゃんと、ハルちゃんは、シャボン玉のママになって頂戴ね」

 「はーい」

妹たちは、優しく、くんちゃんが、言ったとおりに、ふーふーふーと、やさしく吹きました。
すると、3人の口元から、たくさんのシャボン玉たちが生まれていきました。

ふーふーふー
3人で一斉にシャボン玉を吹きました。

 「わあー。きれい」

不思議なことに、ぬれた灰色のアスファルトの上をシャボン玉が、半分に割れずに、一面に残りました。
シャボン玉が、七色にひかって、それはまるで、春のお花畑のように輝きました。

くんちゃんたちは、とても楽しく、ものも言わずに、次から次に、シャボン玉を吹きました。
さっきまでの暗い気持ちが、ぱーっと、明るくなりました。

 「おねえちゃん、ひなちゃんも、ハルちゃんも、シャボン玉ママになれたよ」

 「その調子で、たくさんのシャボン玉の赤ちゃんをつくろうね」

ふーふーふー
今度は、アジサイの花に向かって、3人で、シャボン玉を吹きました。
アジサイの葉っぱの上に、シャボン玉のお花がいっぱい咲きました。
アジサイのお花と、シャボン玉のきらきらした色が、あまりにもきれいで、くんちゃんたちは、うっとりしました。

 「シャボン玉の妖精を私たちが作ったのよ」

くんちゃんは、お姫様になったようなかおをしていいました。

ふーふーふー
おままごとで使っている、プリンのカップや、お皿に、3人は、そ~っと、シャボン玉を吹いてみました。
すると、おいしそうなシャボン玉プリンや、シャボン玉2個がくっついたシャボン玉ケーキが、きらきらとできました・・・・。

 「いただきまーす」

一番小さなシャボン玉ママが言いました。

 「これこれ、これはシャボン玉の妖精さんにあげなさい」

くんちゃんがちょっぴり威張って言いました。

ふーふーふー
さてさて、3人のシャボン玉ママ、今度はどんなシャボン玉を吹こうかと相談しました。
そして辺りを見回すと、おうちのフェンスが、くんちゃんたちと、遊びたそうにひっそりとしていました。

 「おうちのフェンスさんが一人でさびしそう。もっと近くでシャボン玉が見たいっていっているわ」

くんちゃんは、弾んだ声で言いました。
そして、おうちのフェンスに向かって吹いてみました。
すると、おやおや不思議、シャボン玉が、フェンスにくっついて、野ぶどうが、できました。

 「おいしそう!」

3人は、フェンスに着いたシャボン玉の野ぶどうが、きれいで、あまりにも、おいしそうに見えたので、思わず食べたくなりました。

 「ここは、しゃぼん玉の畑ね」

そう、くんちゃんが、ポツリとつぶやいたとき、シャボン玉がぱちんぱちんと割れました。
3人は、辺りを見回しました。さっきまで輝いていたシャボン玉が、残念ながら消えていることに気がつきました。

 「そろそろ、おやつよー」

本物のお母さんの声が、聞こえてきました。
3人は、ニコッと、かおをみあわせて、

 「はーい。いま行きまーす」
 「曇っているのに、お外に出て、なにをしていたの」
 「ママ、あのね、シャボン玉ママになってね、シャボンだまの妖精さんにあったりねシャボンだま畑にいってね、おいしそうなぶどうをつくったの・・・」」
 「ふーん」

お母さんは、なんだかよくわからないって顔をして、3人を見ました。
また空から。雨が降ってきました。
でも、くんちゃん、ひなちゃん、ハルちゃんの心の中は、シャボン玉の七色の虹が晴れ晴れとかかっていました。

おしまい。

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